断片日記

断片と告知

群れ

飯を食って、糞をして、歯を磨いて、顔を洗っているうちに、雨がやめばいいのにと思う。やまないので諦めて外に出る。副都心線に乗る。いつも空いている雑司ヶ谷駅は、ゴールデンウィークも関係なくやはり空いている。ほとんど人のいない駅から、ほとんど人のいない地下鉄に乗り、明治神宮前駅で降りる。エレベーターに乗り、地上出口に降り立った瞬間、人の多さに眩暈がする。雨だろうとゴールデンウィークだろうと、人の少ない町はいつでも人が少なく、人の多い町はいつでも人が多いのだ。他人のさす傘も自分のさす傘も、歩きの邪魔だ。すれ違うたびにコツンコツンと傘の端があたるのが不快。それを避ける場所もない、みっちりと人がいる表参道の緩い坂をのぼっていく。骨董通りを歩き、ハンティングワールドの先を右折する。ビリケンギャラリーでミロコマチコさんの個展「大群」を見る。壁に貼られた動物の絵ばかりが群れとなり、見るこちら側に迫る。剥製の動物にぐるりと周りを囲まれた、上野の博物館を思い出す。ラマの絵が好きだ。植物の絵も好きだ。ギャラリーに佇む彼女にそれを伝えて外に出る。自分に描けない絵を見たときは心が苦しい。苦しい狂おしいこの気持ちを、どこに持っていこうか。