断片日記

断片と告知

HBギャラリー

青山のHBギャラリーは、イラストレーションを描く人間にとっては特別な場所だ。ここで個展をすることが夢だったり、夢の第一歩だったりするからだ。
20代の途中。絵の学校は出たけれど、絵で食べていくのは夢の夢だと思っていたあの頃。アルバイトをしながら食いつなぎ、何をしても飽きっぽい自分がなぜか絵を描くことだけは飽きず、結果誰に見せるでもない絵ばかりが部屋に溜まっていき、その溜まった絵を年に1度、HBギャラリーのファイルコンペティションに応募していた。
HBファイルコンペは、毎年秋に募集があり、年末に結果が出る。コンペに入賞すると、賞金は出ないが、そのかわり夢のHBギャラリーで個展ができる。次点の場合はグループ展ができる。何の目標もなく絵を描く日々はなんだか寂しかった。なので1年の締めくくりに、力試しのように、このコンペに応募していた。
はじめて次点に入選したのは98年の年末で、翌99年にグループ展をしている。それから1度、藤枝リュウジ賞をいただき個展をし、その後もう1度次点に入りグループ展をしている。この10年の間、3回もHBギャラリーで展示をしている私は幸せものだ。そして今年、もっと幸せなことがあった。
HBファイルコンペの応募要綱に私のイラストが使われたのだ。応募要綱は小冊子になっており、白黒の印刷だが数ページにわたり私の絵が画集のように使われている。表紙のイラストと同じもので、封筒と、Tシャツまで作っていただいた。それが今日送られてきて、20代のあの頃こんな未来は予想できなかったよ、とうれしくて涙が出る。