断片日記

断片と告知

儀式

遅めの朝に目が覚める。時代劇の再放送を見て、早目の昼飯を食べてから、家を出る。古書往来座の前を通り、何かしている瀬戸さんと話すこともある。画材が足りないときはそのまま明治通りを池袋まで歩き、世界堂で用を足す。画材が足りているときは池袋には寄らず、まっすぐアトリエを目指す。途中、図書館に寄ることもある。1階の大人の本の棚の間をぶらりと1周し、適当な本をみつくろい、借りて出る。字ばかりの本はここでは借りない。アトリエで見る本は、なるべく絵や写真の多い、見て楽しめる本がいい。借りた本を抱えてアトリエに行く。1階の受付で鍵を受け取り、自販機で冷たいお茶を買う。アトリエの入り口の引き戸を開ける。前の日、遅くまで誰かが描いていれば、アトリエの中にはまだクーラーの冷気がひんやりと残る。前の日、誰も使っていなければ、西日がさすこの部屋は、戸を開けた瞬間からむっと暑い。リモコンでクーラーをつける。ぶおん、と頭の上で大きな音がし、冷たい風が流れ出す。Tシャツを脱ぎ、ジーパンを脱ぎ、絵を描く用の服に着替える。カーテンを開ける。窓の外に広がる空と桜の木を見る。拾ってきた椅子に座り、借りてきた本をパラパラと見る。冷たいお茶をひとくち飲む。さて今日は、どんな絵を描こうか。