断片日記

断片と告知

まんが道

好き勝手に描いた絵と、仕事の絵、は違う。予想もしなかったお題を出され、描けます、と返答したからには締め切りまでに描かなければいけない。いつも苦しみは、そこからはじまる。機械のように淡々と描ければいいのにな、と思う。淡々と描けるくらいなら絵描きにはならなかった、とも思う。仕事なんだからもっと楽に描けるようになるべきなのでは、とも思う。苦しんだからっていい絵が描けるわけでもないだろう、とも思う。
締め切りが近づき、これだ、という絵も描けないまま、体育座りの膝の上に顔を埋める。こんなとき、頭に浮かぶのは藤子不二雄Aの漫画「まんが道」。多数の締め切りを抱えたまま夏休みに実家の高岡に里帰りし、結局間に合わず全ての連載を落とす、というあの恐ろしい話がぐるぐると頭を回る。満賀道雄才野茂の2人にはテラさんがいて、東京に戻ってこいと叱咤激励してくれるが、私にはテラさんがいないので、仕方なく顔をあげて絵の続きを描く。全ての人の人生にテラさんがいてくれたら、と思う。