断片日記

断片と告知

午前様

山手線に乗り恵比寿へ行く。東京都写真美術館で「ジョルジュ・ビゴー展 -碧眼の浮世絵師が斬る明治-」を見る。明治の時代に来日し、その時代の日本の風俗風刺を描いたフランス人画家の展示。日本滞在中に出版された画集もいくつかあり、展示されているそれを見ると、外国人の描いた洋風の絵に和綴じ、というちぐはぐさが楽しい。見終わって美術館のロビーを歩くと、ムトーさん、と声をかけられる。見ると外市常連古書店・九蓬書店のカバちゃんで、やっぱりジョルジュ・ビゴー展を見に来たとのこと。外市以外で会うとなんだか変だね、ほんとだね、と笑って別れる。
せっかく恵比寿まで来たのだからと、NADiffにも寄る。ここにしかない本もたくさんあり見れば心がときめくが、やはり青山の頃のほうが良かったなと思う。現状よりも昔の方がよく思えてしまうのは、事実そうだからという気もするし、年を取った人間がおちいり易い過ちのような気もする。
渋谷まで歩く。地下鉄に乗り神保町で降りる。待ち合わせ場所にはすでに、デザイナーのYさんと、編集者のKさんがいる。今夜はある仕事の打ち上げ。3人で宮崎地鶏の店のテーブルを囲み、お疲れ様でした、と乾杯をする。地鶏をつまみつつ、本の話から山の話まで、仕事とは関係のない話題があちこちに転がっていく。数時間飲み話し、この人はこんな人だったのか、といつもと違うその人を知ることは、お酒を飲む楽しさのひとつ。
神保町駅で別れ、1人後楽園まで歩く。後楽園駅から丸の内線に乗って帰るという計画は、後楽園に行く途中にある食堂アンチヘブリンガンになんとなく寄ったことでお流れとなる。お客さんはすでになく、身内だけの賄いパーティをしているところに乱入する。ネギさんがいて、イラスト同業者の北村さんもいて、偶然の再会がとてもうれしい。生ビールとワインと美味しい賄いご飯をいただき、気づけば午前2時を越えている。電車は当然あるはずもなく、ここから雑司が谷の家まで1時間の道のりを、酔っ払って歩くのが辛い。