断片日記

断片と告知

蛇女

妬み嫉みの感情が、体に黒く溜まっていく。動物園の片隅の、爬虫類館の水槽の中で、何匹いるかわからないほどねじり固まり蠢く蛇を思い出す。いっそのこと、おまえなんか大嫌いだと、声に出せば少しはすっきりするのか、よけい惨めか。そんな話を人にすれば、女たちはそうだとうなずき、男たちはそんな感情なんかこれっぽっちもありませんとそ知らぬふりをする。男はいつでも恰好付けで、だから朝起きても虫にしか化けられないんだと、馬鹿にする。女はいつでも蛇になる。恋した坊主に裏切られた女は蛇になり、愛しい男を焼き尽くす。火事場で出会った男会いたさに江戸の町を焼いた女もたぶん蛇だ。見たものすべてを石にかえる西洋の化物の、髪の毛1本1本が蛇なのは、妬みと嫉みの結晶ではないのか。そんな思いを抱きながら眠りにつけば、朝起きて布団の中にいるのは私ではなく、ねじれた黒い蛇な気がして怖い。