断片日記

断片と告知

キク薬局ガレージにて

みちくさ市」を開催している鬼子母神通り商店街のキク薬局さんから、ガレージの扉に絵を描かないか、と言われたのは9月の終わりか10月のはじめか。面白そうだからと引き受けたものの、絵柄を考え、屋外の鉄扉に合う画風と画材を考えているうちに、気づけば11月も半ばを過ぎている。確か次の「みちくさ市」までに、とキク薬局さんからは言われていたはずで、慌てて作業を開始する。16日にまず下地を塗り、翌17日に本番を塗る。下塗りはキク薬局さんに手伝ってもらいながらも1人で出来たが、細かい作業が多い本番は1人では無理。なのでお手伝いに、その日、仕事が休みの王子を誘う。
約束の昼12時に、シュークリームの入った小箱を片手に現われるところが王子らしい。見かけよりも、だいぶ重たいシュークリームで腹を満たしてから、作業を開始する。鉄扉をレールから外し、屋根付きのガレージの床に横たえる。前日に白く下塗りした箇所を空けて、マスキングテープで養生する。絵を描く場所は、横幅176センチある鉄扉の真中の帯状の部分。すすきみみずく、ざくろ、銀杏、と鬼子母神にちなんだ切り絵を帯状の部分に並べて貼り付け、その上から黒のスプレーで吹き付ける。ペンキが乾ききる前に切り絵を剥がせば、黒い帯状の中に白いすすきみみずく、ざくろ、銀杏が浮かび上がるという仕掛け。
鉄扉は3枚あり、1枚目を乾かしている途中で、キク薬局さんのご好意の出前の特上寿司が届く。缶ビール飲みつつ寿司つまみつつのところに、旅猫雑貨店の金子さんが遊びに来る。いいときに来たー、と言いながら一緒に寿司をつまんでいく。昨日も今日も、ここで作業をしていると、近所の人たち、商店街の人たち、わめぞの人たちが、遊びに来たり、ふと立ち止まり、話していったり。それがとてもうれしくて楽しい。
1枚出来上がれば、2枚目3枚目は要領がわかり、作業はより早くなっていく。私が「あ」とひとこと言えば、王子はその先の「あいうえおかきくけこ」くらいまで察して動ける男なので、私の仕事はどんどん楽になっていく。あれ、ここ、そっちを、うぅぅ、などとつぶやけば、さささと動き、見る間に次を仕上げていく。あだ名は「王子」なのに、足軽並みに動ける男、それは王子あなたです。予定よりも数時間早く3枚仕上がったのは全て王子のお陰であります。
7時前には作業も終わり、鉄扉3枚をガレージのレールにはめて道から眺める。やって良かったと思えるものが出来たと思う。キク薬局さん、王子、どうもありがとう。キク薬局さんから、今日のお駄賃と、打ち上げ代までいただいてしまい、池袋の街へ飲みに行く。昼12時から缶ビールと缶チューハイ片手に作業をしていたが、打ち上げの酒はまた別腹なのだ。
雑司が谷 路地裏縁側日記: ■武藤さんの壁画制作
キク薬局ガレージの壁画 (キク薬局) : 雑司が谷 鬼子母神通り商店街 「ちょっとみちくさ」
白衣を着た頭頂部の薄い女がワタクシであります。