断片日記

断片と告知

踏む

すばしっこく生きていた子供時代、うんこを踏むやつなんか馬鹿だ阿呆だと思っていたが、大人になってから2度うんこを踏んだ。どちらも夜道で、どちらも缶ビール片手に酔っ払って歩いていたときだった。1度目のうんこは干からびて固く、踏んだからといってどうなることもなかったが、2度目のうんこは柔らかかった。履いていたスニーカーの靴底の溝にうんこがぎっしり詰まったときは死にたくなった。自分のうんこでさえ嫌なのに、どうして他人だが他犬だか他猫だかのうんこを踏まなければならないのかと夜道で泣いた。泣きながら、歩道や縁石にうんこをなすりつけながら歩いて帰った。うんこを踏んだからといって靴を捨てるほど金持ちでもないので、その靴はきれいに洗って今でもそのまま履いている。その靴で美術館にも行くし、散歩もするし、人にも会う。誰もこの靴がうんこを踏んだ靴だと知らないことが少し愉快だ。