断片日記

断片と告知

あったか介護・看護のための用語集

mr10162010-02-01

大きな書店で働いていたとき、私の担当は、医学・看護・福祉、という専門書だった。担当になったばかりの頃、棚入れして、と言われ、目の前に積んである本が、基礎なのか、内科なのか、外科なのかもわからず、さらにその中の細かく分かれた分野のどこに入れればいいのか見当もつかず、それよりもはじめて見る医学用語に怖気づき、何も出来ず、立ちすくんだことを覚えている。毎日棚を見て、毎日本を触って、それが何か解らないなりにどの棚に入れればいいのかを覚え、アルバイトから契約社員になり、本の発注を任され、自分が発注した本が売れていく喜びを知り、望んで担当になったわけではない医学書という面倒くさい専門書を少しずつ好きになっていった。
日々の業務をこなしながら、いつしか自分の担当する棚に自分が挿画を描いた本を並べたいという思いが芽生えたが、人体解剖図のような細密画も描けず、手技や技術の図説も描けず、看護雑誌の表紙を飾るようなマスコットもかけない私にその機会はなく、20代後半から働いた書店を30代半ばで辞めた。
書店を辞めて数年目の去年末、仕事の依頼の電話があった。しょうりんしゃと申します、と電話の向こうから聞こえてくる懐かしい名前に胸が躍った。そして、今では自分のものではなくなった棚に、自分が挿画を描いた本が並ぶことを想像し、ひとり笑った。
http://www.amazon.co.jp/%E3%81%82%E3%81%A3%E3%81%9F%E3%81%8B%E4%BB%8B%E8%AD%B7%E3%83%BB%E7%9C%8B%E8%AD%B7%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AE%E7%94%A8%E8%AA%9E%E9%9B%86-%E6%B0%B4%E6%BE%A4-%E8%8B%B1%E6%B4%8B/dp/4796522123