断片日記

断片と告知

豆まき

小学生で受験し、中学から私立の女子校に通うことになった。小学校で仲のよかった友人たちはみな近くの公立の中学校へ通い、私ひとり電車に乗り少し離れた女子校に通った。通学の途中、家から駅までの道のりですれ違うとき、ただひとりだけ彼ら彼女らとは違う制服を着ているのが恥ずかしかった。たまに会う友人たちの口から出る、知らない名前、知らない行事、知らない学校の話を聞くのが苦痛でたまらなかった。楽しそうな彼ら彼女らが羨ましくて仕方がなかったが、そう思ってしまう自分がより寂しく思えて嫌だった。やがて、学校が変わればそれぞれの生活も変わるのだと諦め、彼ら彼女らと会うのをやめた。
女子校にも友人はいたので寂しくはなかったが、私立なのでどの友人の家も遠かった。板橋、葛飾、埼玉と、学校帰りに家にかばんを置き、ふらりと遊びに行く距離ではなかった。学校帰り、近所の寺や神社でおこなわれるお祭りや縁日に、気軽に一緒に行く友人がいなかった。そのときはじめて、家の近くに友人がいないことの寂しさに気がついた。祭りや縁日で、楽しそうな彼ら彼女らの輪に入っていく気にも今さらなれず、やがて祭りに行くこともやめた。
あれから20数年経って、近所に友人が出来た。鬼子母神で豆まきがあり、平日の夕方なのに、たいした約束もしていないのに、行けば誰かしらの顔があった。たまたま仕事が休みだった、店をちょっと抜けてきた、と彼ら彼女らは言い、一緒に豆を拾った。