断片日記

断片と告知

屋上

ラブホテル街を抜けて、また病院に行く。今日は腹部CTを撮りに行く。1階の受付から4階のCTの部屋まで、看護婦がひとり付き添い案内してくれる。手に持つカルテに一瞬目を落とし、あぁお腹が痛いのね、とつぶやく。大きな病院だとすごく待たされるけど、ここは空いているからすぐ見てくれる、穴場なのよ、と話す看護婦に素直にうなずくことが出来ず。数時間待ち数分診察の混んでいる病院も嫌だが、妙に空いている総合病院もどこか怖く頼りない。
いくつかの病室の前を通り、外から見るよりもだいぶ奥行きのある病院の最奥に、CTの部屋はある。カーテンの向こうで、安いビジネスホテルに置かれている、丈の短いごわごわした浴衣のような検査着に着替え、台の上に横たわる。息を大きく吸って、とめて、はっきりした滑舌のこの人だけは、この怪しい病院の中で信頼できるとなぜか思い込む。10分もかからずに終わる。着替えて1階の受付まで戻る。途中、開け放った病室のベッドに、上半身だけおこされた白髪のおばあちゃんが4人、何も言わず目だけがこちらを向いているのを見て、どうしていいのかわからなくなる。エレベータのボタンに「R」とあるのを見て、逃げるようについ押してしまう。屋上の入り口には、患者の立ち入り禁止の張り紙がある。開いているドアから顔だけのぞかせ外を見る。ラブホテルの派手な看板と、駅前にしては広い空が広がっている。