断片日記

断片と告知

大阪のぞき

mr10162010-04-16

木村衣有子さんの新刊『大阪のぞき』の打ち上げで、東大宮へ行く。東大宮は『大阪のぞき』の中で木村さんと対談しているエンテツさんこと遠藤哲夫さんの最寄駅。池袋から湘南新宿ラインに乗り30分で着く。
ひとつしかないホーム、階段をあがるとひとつしかない改札、その横に人待ち顔で立つエンテツさんを見つける。エンテツさん、と声をかけ手を振る。横に立ち間近で顔を見る。すでにこの人は酔っている。
木村さんの到着を待ち、1軒目の酒場「鉄砲屋」へ行く。早い時間に行かないとレバ刺しがなくなるから、とエンテツさんが言う。駅前すぐの焼き鳥屋。小さなカウンターは常連客で占められている。奥のテーブル席に座る。和牛のレバ刺し、いかにも手で丸めたいびつなつくね、焼き鳥の盛り合わせ、芋がごつごつしているポテトサラダ。生ビールで乾杯し、『大阪のぞき』の発売を祝う。私はこの本の、まえがきや目次、各章の扉に、絵を描いている。
『大阪のぞき』は、京阪神エルマガジン社の発行している雑誌「Meets Regional」と、WEB版「大阪のぞき」の連載をまとめたものだ。いかにも大阪なもの、と、外から見ると大阪っぽく見えないもの、が、同じ比重で紹介されているのが面白い。天王寺動物園太陽の塔、いか焼き、京阪電車、と同じ重さで、新しく出来た蕎麦屋、チョコレート、ギャラリー、骨董屋が紹介されている。いかにもその町らしさ、といった場所しか載っていないガイドブックや本を見た後に実際にその町に行ったときにおこる違和感と落差が、たぶんこの本にはない。古くからある店も新しい店も、有名な場所もそうでない場所も、木村さんが面白いと思ったそのままに紹介し書いているのが自然でいい。
iTohenとdemokuraのところに、私の名前が出てくる。連載時は、友人、として書かれていたものが、単行本化で、武藤良子、に直っていた。木村さんとエンテツさんとはじめて会い飲んだのは2008年1月30日。木村さんが大阪iTohenでの個展を見に来てくれたのは2008年4月。あのときはいつか一緒に仕事をする日が来るとは思ってもいなかった。『大阪のぞき』が本になり、絵を書くことで参加出来、発売を祝って3人でお酒を飲めることが本当にうれしい。
線路沿いの道を歩き、2軒目の酒場「昭和酒場コタツ」へ行く。線路沿いの道から、駅のひとつしかないホームがよく見える。蛍光灯で照らされまばらに人が立つホームが、薄暗い道から見上げると舞台のように見える。停車している電車を指して、あれに1時間乗れば実家に着く、北関東の町はみんなこう、こんな町が延々と続いている、と木村さんが言う。
鳥のてんぷら、自家製ハム、しっとりした焼きそば、女子っぽい食べ物として頼んでみた明太ポテトチーズ。ビールからサワーへ、木村さんとエンテツさんはキンミヤのホッピー割りへ移っていく。
駅を越え、3軒目の酒場「よってってちゃぶだい」へ行く。この辺りから記憶がまばらになる。すでに腹いっぱいのはずなのに、賄い飯だという鮭といくらの親子丼をひとりでかっ食らった気がする。木村さんがお店の人に『大阪のぞき』を差し上げていた気もする。会計をちゃんと払ったかどうかの自信がない。エンテツさんとどこで別れたのかも記憶にない。気づくと上り電車の中で、横には木村さんが座っていて、赤羽で別れたことだけ覚えている。
http://www.amazon.co.jp/%E5%A4%A7%E9%98%AA%E3%81%AE%E3%81%9E%E3%81%8D-%E6%9C%A8%E6%9D%91-%E8%A1%A3%E6%9C%89%E5%AD%90/dp/4874353215