断片日記

断片と告知

外側

西日暮里駅の改札を抜け、山手線の外側へ出る。舎人ライナーの高架と高いビルに囲まれた視界の悪い交差点で信号を待つ。西日暮里、日暮里、鶯谷、で降りたときの、山手線の内側と外側の景色のちぐはぐさにいつも戸惑う。寺や墓地、古い店や家の多く残る内側と、高層マンションとその1階に入るチェーン店が視界に入る外側が、いつ降りても同じ町と思えない。
交差点の向う側に見える酒場「はやしや」へ入る。間口に対してえらく奥行きのある店の中を「コ」の字型のカウンターがぐるりと1周している。ナンダロウさんとNEGIさんが飲んでいる。便所から戻ってきたU-SENが加わり、横一列、4人並びで乾杯をする。カウンターの中では、妙齢の女性がふたり、ナンダロウさんが古書往来座の瀬戸さんに似ていると言い張る店長がひとり、働いている。焼き鳥、うずらたまご、カニコロ、鶏のから揚げ、ポテトフライをつまみ、ビールを飲む。
4人並んで飲み話すことに首が疲れ、西日暮里駅前の酒場「喜多八」へ行く。小上りのテーブルを囲み、昔読んでいた本と漫画の話しをする。ナンダロウさんとNEGIさんは同い年の43歳で、私よりも5歳年上。たいした年齢差ではない、大きなくくりでは同じ時代を生きているはず。それなのに子どもの頃、学生の頃、読み通過してきた本や漫画があまりにも違う。今でも活躍する作家が世に出た瞬間に立ち会え、デビュー作品を読み、その才能に痺れたこと。自分も必ず誰かの瞬間には立ち会えているはずなのに、人から聞く話しはいつも悔しく、羨ましい。
ラーメンが食べたい。わがままな意見が通り、日暮里のラーメン屋まで、一駅分の夜の散歩をする。山手線の外側の道を歩き、京成電車の高架をくぐるとまた高層マンションが見えてくる。ここは昔駄菓子屋の問屋街だったとこ、ナンダロウさんが歩きながら教えてくれる。
日暮里駅前のラーメン屋「馬賊」に入る。どん、どん、と強く打ち付ける音がするのは、ここが手打ち麺の店だから。瓶ビールと餃子と各々のラーメンを頼む。ここでは何の話しをしたっけ。ムトーって馬賊みたいだな、昔ナンダロウさんに言われた言葉を思い出しながら、坦々麺をすする。