断片日記

断片と告知

もっとずっと

バスキアの、ドキュメンタリー映画の宣伝記事を、新聞で読む。バスキアも生きていれば50歳。記事にはそう書いてある。美術の教科書に載るような人の年齢が、わたしと11しか違わない。せめてもう少し、手の届かない年齢でいてくれないものか。
わたしが子供のころテレビに出ていたアイドルが、今もまだ、タレントとして、俳優として、テレビに出ている。テレビや雑誌で、ふと年齢を知る。わたしと年がいくつも変わらない。わたしが子供のころから働いている彼らには、もっとずっと年上でいて欲しい。
新宿のベルグの立ち飲みカウンターで、生ビールを飲む。壁面では写真展が行われている。白黒の、70年代か80年代初期の、浅草の雑踏にいる子供の写真。写真に写る、子供が着ているセーターに、子供の着ているジャンパーに、見覚えがある。セーターについた毛玉のようなちゃちな飾り、ジャンパーの胸の安っぽいエンブレム。わたしが子供のころ、流行っていた着ていた服と同じ。写真の中の子供たちは、あのころのわたしと同い年くらいで、確かにわたしもこの時代に生きていたのだけれど、白黒の時代がかった景色の中は、もっとずっと昔に見える。