断片日記

断片と告知

誘蛾灯

アトリエで作業し、誰とも話さないで終わりそうな1日、帰り道に古書往来座に寄る。番台には、瀬戸さんか、ノムさんか、王子がいて、あー、とか、どーもー、とか言いながら、こちらを見て笑ってくれる。帰り道、歩きながら飲んでいた缶ビールや缶チューハイを片手に、10分か20分か話す。仕事の邪魔をしていると解りながら、1日の終わりにやっと誰かに会えた気がして、話すのをやめるのが、立ち去るのが、惜しい。閉店まで居座りつづけ、そのまま飲みに行くことも多い。今日も、アトリエ、銭湯「大塚記念湯」、帰りに古書往来座に寄り、最後は瀬戸さんと王子とサン浜名中華で飲み、1日が終わる。誘蛾灯に集まる虫のように、夜の道を照らす往来座の灯りに吸い寄せられる。でもこの灯りはわたしを殺さず、1日の終わりを少しだけ軽くしてくれる。