断片日記

断片と告知

将軍様プレイ

わたしの数少ないテレビの時間は、再放送の「暴れん坊将軍」で占められている。松平健扮する八代将軍・徳川吉宗が、貧乏旗本の三男坊・徳田新之助と名乗り、たびたび城を抜け出しては、町火消「め」組に厄介になりながら、江戸の市民とふれあい江戸の悪を倒していくという時代劇だ。
大抵、利用されたり殺されたり悲しい目に合うのは健気に生きる江戸の市民で、利用したり殺したりする悪いやつは大店の商店や問屋の旦那で、その旦那をさらに裏から操るのは大名や旗本など、将軍様に近い身分の人たちだ。
劇の最後は必ず、大きな屋敷で悪巧みをする現場に将軍様自ら現われ、何奴じゃ、と叫ぶ悪人たちに、余の顔を見忘れたか、と返す。う、上様、などとうろたえながら1度は頭を下げるが、潔く腹を切れ、などと言われては、悪人も黙っておらず、上様がこんな場所にいるはずがない偽者じゃ斬れ斬れー、と応酬する。この時代将軍様の顔を知っているということは江戸幕府の中でも相当に位の高い人たちのはずで、そんな自分の組織の人たちに毎回毎回裏切られている将軍様が不憫でならず、江戸幕府だめじゃん、と見るたびに思う。
もしわたしが会社の社長なら自分の会社の社員に毎回毎回裏切られたら人間不信になる、とパロパロ向井に話すと、あれはプレイだから、と言う。上様がそろそろ暴れたがっているから次はお前が斬られてくれるか、わかりました上様のためなら、とそういうことなのか。開き直った悪人たちが刀を抜き上様に襲い掛かる。上様と御庭番で20〜30人の悪人を斬り捨てていく。それなのに、屋敷の障子や襖に血が飛び散ることはない。本当にプレイなのかもしれない。