断片日記

断片と告知

池袋大橋

家からアトリエに行く道は何通りもあって、少し余計に歩きたい気分のときは、池袋大橋を渡って西口に行く。東口の家から西口のアトリエに抜ける道は、ビックリガードだったり、WEロードだったり、どれも線路の下を通るトンネルなのだけれど、池袋大橋だけは線路の上をまたぐ陸橋だ。山手線、埼京線東武東上線の線路が足元に伸び、夕暮れ時にはぎっしりと人の詰まった電車が北に向かって走っていくのが見える。橋の真ん中あたりで立ち止まると、右手に東武百貨店とラブホテル街、左手にサンシャインとパルコ、正面の遠くに新宿の高層ビルが見える。ろくなものは見えないが、いつでも視界は開けていて、ごうごうと強い風が吹いているのが気持ちがいい。空の広い場所で風に吹かれていると、いつでも海にいるような気持ちになる。一緒に海に行ったことのある人がこういう場所に立つたびに、海にいるみたいだね、と言うのが口癖だったからか。池袋大橋を歩くのは少し余計に歩きたいからじゃなく、本当はただ海が見たいからだけなのかもしれない。