断片日記

断片と告知

アトリエ探し

鬼子母神の節分で、豆を3袋ひろう。その後、古書往来座の瀬戸さん、寝床やさんと、雑司ヶ谷不動産巡りをする。いま借りているアトリエはこの春に追い出される予定で、どこか近所にアトリエとして使える安アパートを探す必要があり、不動産屋慣れしている瀬戸さんと、まっすぐ帰らなくてもよさそうな寝床やさんが、このアトリエ探しに付き合ってくれたのだ。アトリエとして使うので、風呂なし、共同便所でもかまわず、小さな流しさえあればいい。古くてもかまわず、できれば安く、安いなりには広く清潔で、と理想を並べていくと、頭に浮かぶのは雑司ヶ谷の王子のアパートだった。管理の行き届いた清潔な6畳の和室と3畳の台所の風呂なしアパート。自分の探す部屋の目標が定まる。
条件に近い物件の図面を出してもらい、家賃と間取りと場所を見比べる。良さそうなもののコピーを何枚かもらう。いい物件が出たら教えてください、と連絡先を書いてくる。そうして2軒の不動産屋を回り、手に入れた図面を片手に、雑司ヶ谷を歩く。よく前を歩いていたアパート、王子のアパートのすぐ向かい、台所の窓から会話が出来そうなアパート、九龍城のような生活感漂いすぎなアパートの裏手に建つアパート、目白台図書館がすぐ目の前のアパート。どれも面白いが、どれも何かが違う。本当にぎりぎりにならないと良い物件は見つからないんですよ、と理想のアパートに住む王子に言われた言葉が頭をよぎる。
寝床やさんとは途中で別れ、瀬戸さんとふたり、いつものラーメン屋に飲みに行く。物件を探しながらロング缶を飲み続けていた瀬戸さんはすでにへべれけで、コップについだビールを口まで運ぶが、飲むよりも、テーブルにこぼす量のほうが多い。それでもいつもの叉焼麺だけは残さず食べて、店を出る。