断片日記

断片と告知

次男

渋谷で打ち合わせを済ませ、携帯電話を見ると、着信履歴にいくつも同じ名前が並んでいる。いまどこですか。電話の向こうから不機嫌な声がする。渋谷だけど。え、なんで?声はさらに不機嫌になる。プリントゴッコをしに来るとは言ってたけど、何時に来るとは言ってなかったじゃない。そう答えると、橋本くんはふて腐れて黙る。
副都心線で要町まで。待たされてふて腐れている橋本くんと、またアトリエで、余寒見舞い申し上げます、を印刷する。世界堂で買いなおした白っぽい紙に、今度は黒いインク一色で、無難に刷り上げていく。今夜飲みに行くAさんに渡したいから。インクの乾いている2枚だけを鞄にしまい、残りの数十枚を残したまま橋本くんは帰っていく。だって次男だから。ふて腐れるたびに、橋本くんはそう言い分けをする。