断片日記

断片と告知

みどりの窓口

誘われて赤坂へ、志の輔の独演会を観に行く。演目は「異議なし!」「みどりの窓口」「柳田格之進」。まくらから「異議なし!」「みどりの窓口」では笑わされ、最後に「柳田格之進」で泣かされた。「みどりの窓口」は、みどりの窓口で働く職員と切符を買いに来る面倒な客とのやり取りが、仕事終わりに飲みに行った居酒屋で先の客と同じ面倒を繰り返す職員の姿が、可笑しく笑わせる。噺に出てくる客ほどではないがと前置きをし、自分のみどりの窓口体験を話せば、本当にあんなことをする客がいるとは、と飲みの席で驚かれる。
国内旅行の足はたいてい新幹線で、チケットショップで少しばかり安くなった回数券のバラを買い、みどりの窓口へと急ぐ。行く日と帰る日は決めてあるが、電車の時間はみどりの窓口で決める。なるべく空いている時間、なるべく電車と時刻表の好きそうな職員の前に行く。切符を出し、日にちを伝える。いついつ頃某駅に着きたい、と言えば、画面を叩きながら、品川から何時発がありますが、と瞬時に返される。席は窓際で、そうだな、行きは海が見たい、と言ってみる。窓口に座る男の顔が少し弛む。弛んだ顔を見て、帰りは富士山が見たい、とさらに言ってみる。目が笑っている男から、行き帰りの切符を受け取る。帰りの電車はたいてい夜で、車窓の向こうに富士山なぞ見えたためしがない。