断片日記

断片と告知

見立て遊び。料理と野球。

料理の本ばかり扱う古本屋が近くにできたと聞き、知人と訪ねることにした。一軒家を改装したという店は、店というよりも、本棚の並ぶ居心地のいい住まいのようだった。棚を眺め、安く飲める昔ながらの食堂を紹介した本と、はやりの店主が簡単に作れるつまみを紹介した本の、二冊を買った。
帰り道、料理も料理本も、さして興味のない知人に聞かれた。
料理本ってなに?男にとってエロ本みたいなもの?
料理も料理本も興味のあるわたしはしばらく考え、エロ本というよりは、知人の好きな、野球やサッカーの本に近いのかも、と答えた。
わたしが買った、昔ながらの食堂を紹介した本は、さながら、いぶし銀の選手ばかり集めた選手名鑑。はやりの店主に教わるうまいつまみの作り方は、マー君に教わるスライダーの投げ方だ。
わたしはこの例えが気に入り、知人と別れたあともしばらく、例えごっこを楽しんだ。だしの取りかたなど料理の基本はルールブック。街ごとのうまい店紹介はチームごとの選手名鑑かな。日々のつまみからしめまでの献立を考える楽しさは、野球好きの、打順を考える楽しさに似ているだろうか。
アトリエに戻り、買った本をぱらぱらめくる。さて、今日の一番打者はどいつにしようか。日本シリーズと気張るもよし、日々のことだからと、消化試合にするもよし。