断片日記

断片と告知

ちゃんとしてるね

前回、恭太さんや十四郎さんが褒めてくれたのは、ピカソやクレーが子どもの描く絵を面白がるようなもので、技術ではなく、はじめてもらったクレヨンで描きなぐるのがただ楽しくてたまらない、まだ自分が下手なことを知らない、下手なことを恐れない子どもの衝動のようなものを褒めてくれたんだと思います。
下手なことをわかっていながら下手なままでいることは、うまくなるより難しいです。
下手なことを恐れないままでいたいです。
もっとぐちゃぐちゃに、誰よりも下手なのに、誰よりも上から目線で歌いたい。もっともっと大きなぐちゃぐちゃな音が、紙からはみだしていく子どものクレヨンのような音がわたしは欲しいです。

上記のことばは、11月1日に開催したポポタムロックフェスの10日ほど前に、わたしがBOEESの仲間たちへ送ったメールの抜粋だ。前回と書かれているのは、昨年の9月におこなわれた夏葉社まつりでBOEESがはじめて人前で演奏したことを指している。
はじめてのライブで思いがけず褒められたこと、それがなぜだったか、ポポロックフェスのときだけではなくBOEESというバンドのらしさと向かいたい先を考え、結果、檄を飛ばすメールをみんなに送った。
しかし練習を重ねた分、下手は下手なりにまとまっていくもので、ポポロックフェスでの本番後、前回のライブも観てくれた人たちの口から出たことばは、ちゃんとしてるね、だった。けなされたわけじゃない。しかし彼らの表情はことばよりもさらに正直だ。前回のほうが面白かった。そういうことだ。
小学校の廊下に貼りだされた子どもたちの絵が、学年が上がるにつれ勢いがなく、つまらなくなっていくのと同じことだ。BOEESの音は頭でっかちなわたしがはじめて握ったクレヨンだ。練習を重ねながら、しかし音にもこの世界にも慣れずにいること。こころにはじめて握ったクレヨンを持ち続けること。今後の課題にしたい。
BOEES 2015/11/01 in ポポフェス - YouTube
1曲目 「泣くかもしれない」下田逸郎作詞作曲
2曲目 「雀バーニングサンシャイン」藤原健功作詞作曲
3曲目 「固い肉」武藤良子作詞 瀬戸雄史作曲
映像 橋本倫史撮影編集