断片日記

断片と告知

二日目のカレー

まだ要町そばの廃校になった小学校の理科室で絵を描いていたころ、描くのに飽きると近くのかえる食堂に逃げた。かえる食堂ができて間もないころだ。『銭湯断片日記』にも出てくるが、はじめからみどりのカレーばかり食べている。野菜とかみどりとか、日頃を正してくれそうなものに昔から弱いのだ。

みどりのカレーには、季節ごとに違う野菜が入っている。大根、ごぼう、とカレーではあまり見ない野菜に、カレーとは別の下味がきちんとついている。ごぼうの甘塩っぱさがスパイスの効いたルーとよく絡み、ごぼうの歯ごたえとともに食べることそのものが楽しい。

寒くなると、考えるのも面倒なので、週に2回か3回は夕飯に鍋を作る。よく行くスーパーは入ってすぐのところに季節のお買い得の野菜が並ぶ。ほうれん草、大根、ネギ、その日の気分をカゴに放り、魚と肉と豆腐の棚を回ってレジへ行く。土鍋を火にかけ、昆布だしの粉とか白だしとかであっさり作り、馬路村のポン酢で食べる。

あっさりしてても週に3回も食べればさすがに飽きる。鍋の底に肉や野菜がまだあるし、なによりいろんな味が染みでた汁がもったいない、が手が止まる。具沢山の汁を一晩寝かせて考えた。そうだカレーにすればいいんだ。

具が多ければそのままジャワカレー中辛のルーを入れて煮る。少なければ適当に具を足してやっぱりジャワカレー中辛のルーを入れて煮る。鍋の底の大根とかネギとかエノキとか豆腐とか、ふだんカレーには入れない具にためらいがないのは、かえる食堂のカレーが先にあるからだ。何が入ってても包み込むカレールーはえらい。そしてたいていうまい。

うちで二日目のカレーといえば、作った翌日のカレーではなく、鍋の翌日のカレーを指すようになった。我が家の二日目みどりのジャワカレーもなかなかの味、と、年末の最終営業日のかえる食堂を訪ねてみどりのカレーを食べた。別物のうまさだった。