食堂の端っこには食べ終わった食器をさげる場所、返却口がある。
返却口の手前には水の流れる溝がある。ここに食べ残しを落とす。溝の奥には水の溜まった大きな水槽がある。ここに食器を落とす。食器は洗われ翌日も使われる。
溝に落とされた食べ残しは水で流され一ヶ所に溜まる。溜まった食べ残しは二重のゴミ袋に入れられ、ポリバケツに入れられ、ゴミ置き場に捨てられる。
ときどき友人たちと飯に行く。友人たちが食べ残したものもわたしは平気で食べられる。食べ残しはまだゴミじゃない。
皿にのっていた食べ残しは、どこでゴミにかわるんだろう。
必要とされなくなったら。
でも誰かが必要としなくなっても、他の誰かが必要ならまだゴミじゃない。
それなら、この世にゴミなんかない。
でもゴミとして捨てられるものもある。
それは捨てる側がゴミだと思うから。
あいかわらず近くの大学の食堂でアルバイトをしている。食堂に入る業者がかわり、残るか他の大学に行くか悩んだが、近さを選びそのまま残ることにした。
返却口の掃除をして、溜まった生ゴミを素手で掻き出す。たいてい掃除の水や汁がとんで制服が濡れる。明日着る替えの制服の用意を忘れて、汁がとんだ制服をそのままロッカーにしまう。次の日、ロッカーをあけるとちょっと酸っぱい。開けたとたんの空気が酸っぱい。