断片日記

断片と告知

コロナの冬 12月24日から12月30日

12月24日金曜日

晴れ。猫のうんこが臭い。トマトソーセージほうれん草パスタ。Sは往来座へ。こたつ布団、こたつ敷きなど大物を洗濯。パルコの世界堂に画材を買いに行く。帰り道、来月久しぶりに一箱に出るため、サンシャイン通りブックオフを見るが欲しかったテーマの本を探せず。サンシャイン60くまざわ書店で『凪のお暇』9巻買う。S家に戻り、買ったばかりの9巻を読むが、似た展開の繰り返しで読むのが辛くなる。夜、家に寄り母に大和芋をもらう。大倉に買い物に行くと店内はすっかり正月モード、冷蔵の棚に紅白のかまぼこや黒豆、数の子なんかが並び、天井からおせちの品書きの紙が垂れ下がっている。レジのところでニンニクひとつを手に持ったuに遭遇。知らないおじさんが作った四角くない餅をいるか?と聞かれる。往来座へ。nにセブンイレブンのチキン、saさんに缶チューハイをもらい、小さなクリスマス。面白かった、手話のところで館内にすすり泣く声が響きました、と「ドライブ・マイ・カー」を観たasさん。以前、古書探訪の撮影に来てくれたOさんが来店し本を買ってくれたそうで、asさんに米粒写経の栄ハイ動画を見せる。東上線が止まっているとdeさんがやって来る。東上線組のnとdeさんを残し、先に帰る。往来座向かいに出来たビリーザキッドは本日開店。店内に人影は見えないが、街に漂う匂いが変わった。帰り道、ぽつぽつと雨が降り出す。夕飯は、オニオンスライス、ゴーヤチャンプルー、かぼす煮麺。映画「E.T.」を観る。自転車が空を飛ぶシーンからずっと泣いてた、と「E.T.」をはじめて観たS。ポスターで使われている光る指先のシーンは見当たらず。S家泊。

東京都の感染者数、39人。

 

12月25日土曜日

晴れ。母にもらった大和芋でとろろ蕎麦。Sは往来座へ。仕事の文字と絵。夕方、往来座へ。Sと東上線上板橋まで。北口駅前にあった古い呉服屋が閉店し柵で覆われている。SはS家の実家へ。わたしは北口のイトーヨーカドーの裏手から若木通りに出、スーパーベルクスの手前を右折し住宅街に入る。若木通りの角にもその先の角にも、大きく赤字で「ゆ」と書かれた看板がありわかりやすい。看板をたどるとすぐ路地の奥右手に銭湯「ときわ健康温泉」が見えてくる。白い大きな建物で、1階が銭湯、見上げると2階からうえがマンションになっている。入り口右手にコインランドリー。正面ののれんをくぐると左手に下足箱、自動ドアを越えると大きなロビーがどーんと広がる。手前から、テレビスペース、謎の地下に行く階段、大きな金魚が5〜6匹泳ぐ巨大な水槽、30センチくらいある亀1匹だけが泳ぐ緑色で塗装された室内にしては大きすぎるプール、マッサージチェアの置かれたスペース、がロビーの右半分を占めている。それらの手前にテーブルと椅子の休憩スペースもある。ロビー左手は手前から、自販機、入浴券の券売機、ゆっぽくんや銭湯グッズの並ぶショーケース、フロント、飲料水の冷蔵庫、壊れた入浴券の販売機、自販機と並び、その先にまた下足箱と反対側の銭湯の入り口がある。券売機で入浴券480円を買い、フロントに渡す。フロント右手に女湯ののれんがさがる。広大なロビーと違い脱衣所はとても小さい。壁沿いの青緑色のロッカーは、下が大きく、上が小さく、その間がちょっとしたものを置く棚になっている。右手奥に喫煙所と書かれたガラス戸があるが、手前にものが置かれ入れないようになっている。壁のあちこちに「黙浴」のポスターが貼られている。脱衣所と打って変わって洗い場はとても広い。左手手前から立ちシャワーが1台、大きめのサウナ、サウナと男湯との堺の壁に沿って左手はずっとカラン。折り返して右手の湯船の壁に沿ってもカラン。右手は手前から、滝のように水が流れ込み半分が泡風呂になっている大きな水風呂、水風呂の壁に沿ってまたカラン、露天に続く出口、出口の外に半露天のカランが3つ、と少しでも壁があればカランが並ぶ。外に出ると、右手に岩風呂の露天、左手に薬湯の露天がある。岩風呂は無色透明の湯で、せり出した屋根と塀の隙間から空が見える。薬湯はぬるめの茶色で、壁の貼り紙と見ると、火龍薬湯、とあり、生姜などのスパイスが入っているらしい。刺激はないが池袋北口の中華食材店と似た匂いで、薬湯というよりもスープのようだ。こちらは空が半透明のアクリル板で覆われ空がぼんやりとしか見えない。どちらの露天も湯船だけで4〜5畳分くらいありゆったりしている。洗い場に戻ると、露天に行く通路を越えて、右手の壁沿いから正面にかけて巨大な湯船がひとつだけある。湯船のなか右手前からぐるっと回るように紹介すると、なにもないゆったりスペース、寝ジェットがふたり分、アクリル板で覆われた打たせ湯、真ん中の島をぐるっとまわるように作られた歩行湯、向かい合わせに設置された強烈なジェットがふたり分、円筒形であちこちから湯が噴き出すマッサージジェット、電気風呂、とある。この広大な湯船の中央には石の玉が置かれ、真ん中から湯があふれ続けている。打たせ湯と歩行湯の床には足の裏のツボ押し用のデコボコした小石が敷かれている。ひとつひとつがとてもゆったりしており、ジェット系もすべてビンビンに生きている。真ん中の玉をシンデレラ城としてそのまわりをぐるっとアトラクションが囲む銭湯のディズニーランドのようだ。正面奥の壁には外国の城か教会かの写真が貼られているが、全体が青く色あせている。壁全体を覆うタイルは白っぽく、ところどころモザイク状の柄タイルが入り、なぜか梁の部分だけ白いパール状のタイルが貼られている。天井は四角く高く露天に面した壁の窓は大きく、この大きな建物を支える梁が真ん中にどーんと通っている。ロビーも洗い場も外から見て想像出来ないほど立派で大きい。露天と電気とジェットと水風呂とを繰り返し入る。湯からあがり、フロントの女将さんに銭湯遍路の判子を押してもらう。明日競馬だよ、という男性客に、有馬?と女将さん。客はひっきりなしに出入りし話しかける暇もない。外に出、建物のまわりをぐるっと回る。大きいはずで、この区画全部にこの銭湯が建っている。わたしが入った入り口の路地に面して男湯の露天の壁があり、ぐるっと回った反対側の入り口の路地に面して女湯の露天の壁があり、さっきまでいた露天の声が路地にまで響いている。S家に行くと、Sがひとりで昔の写真の整理をしている。S母がSに請われて成田の実家から持ってきたもので、SとS兄が小さかったころ、S母やS父、Sの祖母たちの写真が年代ばらばらで大きな箱に入れられている。6時近くにS母が戻り、SとS母と近くの焼肉の崔安閣へ行く。遅れてS兄も来る。S家の忘年会。生ビール、マッコリ、ナムル、チョレギサラダ、上タン塩、ミスジステーキ、カルビ、桜ユッケビビンパ、石焼ビビンパ。S家の庭を誰かが通り抜けているんじゃないか問題を話し合い。鍵、貼り紙などでの対策。会計後、土産にでかいトマトをもらう。S家に戻り、S兄と写真を見る。懐かしー、と子どものころの友人の名前をあげていくS兄。小学校のときのやつの名前は出るけど大学のころのやつの名前は出ないなー、とS兄。S母に菊芋と干し柿をもらう。上板橋に泊まるS母を残し、SとS兄と東上線で池袋に帰る。S兄とJRの改札で別れる。地下道を西武デパートまで来ると、クリスマスのポスターがバリバリ音をたてて剥がされ、正月のそれと入れ替えられている。ツルハで猫砂、猫エサなどを買いS家に帰る。帰り道、あ雪、とSが言うので空を見えると、白いフケのような小さなものが舞っている。映画「ネバーエンディング・ストーリー」を観る。こんなに短かったけ?昔みたときはもっと長かった、とS。S家泊。

東京都の感染者数、38人。

 

12月26日日曜日

晴れ。納豆ご飯。Sは刻んだショウガをのせたサバ缶を飯にかけて食べている。ドキュメント72時間で、新大久保の24時間格安弁当屋と、碧南の24時間オープンのスケボーパークの回を見る。弁当屋の回は夏の衆議院選を挟んだ3日間で撮影。津波で家を失い仮設住宅からも出されいまは仕事を探しに東京に出て新宿のガード下で寝泊まりしているという男性が、なにか政治に言いたいことはとスタッフに聞かれ、何もない、と去っていく。妻を早くに亡くし子どもをふたり育て50歳のころは地獄でしたと語る男性も、政治になにも期待していないと弁当を買って去っていく。Sは往来座へ。仕事の文字と絵。夜、往来座へ。めずらしいことりちゃん。写真集の仮版を見せてもらう。SIさんにいただいた羊羹チョコを食べながら本搾り。ハナマサで買い物。猛烈に寒い。めずちゃんを雑司が谷駅まで送り、ファミマで買い物して帰る。夕飯は、寒いので豚しゃぶ鍋、しめにラーメンをふたりで1玉。映画「男たちの挽歌」を観る。香港ノワール映画としてよく名前を目にするので今年観てはまったジョニー・トー監督っぽさを期待して観たらだいぶ違い、まだサナギのようなノワールだった。男たちの挽歌が86年、トー監督のヒーロー・ネバー・ダイが98年、ザ・ミッションが99年。S家泊。

東京都の感染者数、43人。

 

12月27日月曜日

晴れ。カレーの壺で作ったカレー。食べているとタマ(猫)が走りながらうんこをしていく。今年で廃業する銭湯に行くかどうか迷っていると、廃線のときに群がる鉄オタの人みたい、その時だけ深刻ぶる浮かれた野次馬、とS。Sは往来座へ。仕事の文字と絵。夕方、キアズマ珈琲でUさんと待ち合わせ。描き終えたクロッキー帳を渡す。市場にいる東の鬼、名古屋の鬼、西の鬼。市場で買えなかった暗い気持ちを置いてくる善光寺。駆け落ちして欲しかった息子。人から言われてあぁそうですかってあっさり割り切れてしまうより、割り切れないものを抱えたままムトーさんは生きていかないと、とUさん。Uさんと池袋のジュンク堂前で別れる。往来座へ行くと、店内は閉め、外の均一棚だけ出して営業している。めんどくさくなっちゃった、とS。法明寺で枯れ葉を拾い糸でつなげ、妖怪ばらんの撮影。本絞り。夕飯を作るのが面倒になりSとジュンク堂裏のばしとんへ。ほぼ満席でカウンターで飲む。ホッピーセット白、枝豆、スパイシーポテト、もつ煮込み、もやし、焼きとん。M家泊。

東京都の感染者数、35人。

 

12月28日火曜日

晴れ。ヨーグルト。鬼子母神前から都電に乗り飛鳥山まで。停留所の端に立つ人影に近寄ると待ち合わせをしたKOさん。ふたりで明治通り沿いに建つ洋食屋ゴリノスへ。生ビール2杯ずつ、ポテサラ、菜の花ベーコン炒め。昼飯としてわたしはタンシチューセット、KOさんはカキフライとわたしのライスを少し食べる。KOさんは、本当なら今年の秋に退職し、飛鳥山のマンションで新生活をはじめるはずだったが、仕事の区切りがつかず、長年住んでいる川口と飛鳥山を行ったり来たりの生活をしている。年末は飛鳥山で過ごすとのことではじめてのランチ会になった。小三治師匠は守られてるなって、幸せになっちゃおっていいよね、M1見ててもさっぱり笑えないナイツは笑えるんだけど。KOさんはわたしのブログを読むと、仕事で酸欠になった脳に酸素がいくと言う。気になるところをプリントアウトし、これってどういう意味?とたずねてくる。わからないことはわからないまま書いています、忘れないように、まわりにとんちの謎掛けみたいなことを言ってくる人がたくさんいるんです、と答える。食べ終え、飛鳥山の前を右折し公園沿いの道を田端方面に向かって歩く。公園、病院、体育館、神社と大きなものが道に沿って並んでいる。緑が多い。このあたりは地盤が固いの、地震保険に入らなくて大丈夫ですよって言われたの、とKOさん。KOさんがおいしいという古河庭園そばのケーキ屋に行くがシャッターがおりすでに正月休みに入っている。甘味を求め、少し戻って平塚神社の入り口にある和菓子の平塚亭へ。予約の餅を取りに来た人たちが外に2〜3人並んでいる。店内奥のテーブルには大きなのし餅が何枚も広げられている。ドラマのロケ地だそうでショーケースに伊東四朗の写真が飾られている。豆大福とみたらし団子、小さな雪だるまのようでかわいらしい正月の餅の一番小さいやつを買う。KOさんは白い餅と黄色い粟餅の切り餅を買う。KOさんのマンションへ。遠くにあらかわ遊園の観覧車。KOさんは豆大福をわたしはみたらし団子を食べる。団子の焦げたところがきちんと焦げた味がしてうまい。窓から見える神社の緑、買うかどうか迷っているテレビ、ほこりが出る床暖房、レースのカーテンを内側につけた窓辺、戸を外して入れた冷蔵庫、ぼられたかもしれない木の棚。KOさんの新しい部屋を見ながらお茶を飲む。さっきKOさんが買った白と黄色の切り餅と、nにと時計をいただく。夕方一緒に散歩、飛鳥山公園を横切り王子駅まで。改札でKOさんと別れ、京浜東北線で日暮里まで、常磐線に乗り換え北千住、東武スカイツリーラインに乗り換え竹の塚で降りる。東口駅前に出ると小さめのロータリーのまわり三方が古めの団地で囲まれている。正面の団地の1階にはマクドナルドや喫茶店が並ぶ商店街になっている。団地の間を抜けて赤山街道に出、しばらく歩き増田橋交差点を右折、はじめの角を左折すると銭湯「高砂湯」の明かりが見える。来る途中、団地があちこちに見えたが、ここ高砂湯の横も古い都営のアパート群が建っている。入り口の左右の壁はガラスブロック、真ん中にのれんがさがり、のれんの上部のガラス部分にうっすら「高砂湯」という文字が見える。のれんは真ん中に「ゆ」と赤字で描かれ両脇に虎が3匹ずついる絵柄。正面の傘入れのロッカーに「常連さんへの感謝を込めて無料開放致しますコロナ下の為常連さん優先で人数制限をしますので!!」と赤マジックで書かれた紙が貼られている。両脇に下足箱、左手が女湯の入り口。引き戸を開けると右手に番台。財布を手に持ちながら入ると、あ、今日はいいんで、と店主。なにかできることはないかって思ってたんだけど、と常連客が話しかけると、いやいやいや、と笑いながら店主。常連客たちは脱衣場で着替えながら、今日でみんな持って帰らなきゃ、とロッカーの下の棚に置かれた風呂敷包みを眺めている。入り口側の壁にロッカー、うえにフランス人形や真っ白いサンゴが飾られた島ロッカーが真ん中にひとつ。洗い場向かって左手の壁沿いに3人分のベビーベッド、その横に杖を付く人物の大きな彫刻が置かれている。男湯との堺の壁は鏡張り、壁の一番向こうに番台から見えるようにテレビが置かれている。いつからそのままなのか、大人の入浴代155円と書かれた紙が壁に残る。洗い場。両脇の壁にカラン、島カランが真ん中に一列。桶は黄色いケロリン。桶はたくさんあるが椅子の数はとても少ない。途中椅子がひとつ空き座ってみるが、おそらくふだんからこの銭湯に来る人の数しかないと気づいて元に戻す。正面奥、向かって右手に小さめ深めの泡風呂、左手に広めでジェットがふたり分ついた広い湯船がある。湯船のなかは細かい水色のタイルが貼られている。湯はどちらもものすごく熱いが薄める人はひとりもいない。湯船のうえのペンキ絵は、手前に浜と海があり小さな島が浮かび、その向こうに大きな富士山がそびえている。天井は高く白く、湯気抜きもどーんと高く、上の方は湯気で煙ってよく見えない。洗い場に、今日は混んでるねぇ、ほら今日でおしまいだから、と常連たちの声が響く。脱衣場で着替えていると、常連じゃないんですが、と言いながら入ってくる客と、いいですよー、と答える店主。銭湯遍路に判子をもらう。ペンキ絵についてたずねると、5年前かな、2016年に田中みずきさんに描いてもらった、と店主。男湯のペンキ絵をたずねると、うーんと困った顔をする。海があって島があって対岸があって、でも、なんとも言えない絵でね、こないだも男湯の絵を女性のお客さんに聞かれて、もうおしまいの時間で人もいなかったから見てもらったんだけど、その人もうーんなんとも言えない絵ですねーって。女湯の絵がメインなんですよ、と笑う。鏡の前の棚にあった少し前の「1010」と足立区の銭湯のチラシをいただく。下足箱の前で靴を履いていると、ここはいつからだっけ?47年前、自分が生まれる前からあって、もともと銭湯で、工場の、と男湯の客と店主の会話が漏れ聞こえてくる。今日で廃業する銭湯の店主は、客になにか言われるたびに、ありがとうございます!はい!はい!どうも!と大きく答え合間に、しゃしゃしゃしゃしゃっ、と笑う。帰りは赤山街道を線路の向こうまで歩き、八百屋の角を曲がって竹の塚駅の西口に戻る。電車を乗り継ぎ池袋に戻ると、上板橋から車で戻ってきたSから電話。ジュンク堂前で待ち合わせ、一緒にユザワヤに行く。往来座のショーウィンドウ用の赤い布と次回の妖怪撮影用の布を買う。東池袋マルエツで買い物。夕飯は、トマトアボカド、菜の花のからし和え、マルエツで買ったパックの寿司。Sが昨晩作った「商店妖怪帖ばらん」の動画を見る。映画「コンタクト」を観る。こんな映画だったっけ?とS。S家泊。

東京都の感染者数、46人。

 

12月29日水曜日

曇り。食パンをトーストし玉ねぎと目玉焼きをのせる。Sはそのうえにスライスチーズをのせたものを食べ、さらにチーズトーストも作って食べている。食パンは昨日Sが上板橋でもらってきた、街でたまに見る変わった店名の高級食パンと宣伝しているもの。味はふつう。Sはブログを書いたりユーチューブを見たりごろごろしている。3時過ぎ、Sを残して家を出る。目白駅から山手線で新宿へ、中央線で吉祥寺まで。吉祥寺は構内も街もすごい人出。東急裏手の藤村中学高等学校の横の銭湯「弁天湯」へ行く。竹の塚の「高砂湯」もここ「弁天湯」も、Nさんから今年廃業すると聞きたずねた。藤村学園が道から数メートル引っ込んでいるので、だいぶ手前から弁天湯の大きな建物が見える。近寄って見ればみるほど体育館かと思うほど大きい。正面右手に緑色のテントの「コインランドリーべんてん」。正面入り口両脇はガラスブロックで昨日の高砂湯と似た雰囲気。のれんをくぐると右手と正面に傘ロッカー、左手に下足箱がある。正面奥のガラス戸に小さな文字でプリントアウトされた廃業のお知らせが貼られている。「CLOSED 休業のお知らせ いつもご利用頂きまして、誠にありがとうございます。令和3年12月31日を持ちまして弁天湯は老朽化等により休業の判断をさせていただきました。突然のお知らせになり申し訳ございません。開業以来、80年近く吉祥寺という街で営業できたのも、ひとえに皆さまにご愛顧いただいたお陰です。心より感謝を申し上げますと共に、皆さまのご多幸を心より申し上げます。置き荷・置き桶を行っている方は年内にお引き上げお願い致します。吉祥寺 弁天湯」。入ると右手にフロント、正面にソファとテーブルの置かれたロビー。脱衣所を削って造られた広めのロビーから凝った天井、柄物の壁紙で覆われ、大きな丸い穴が3っつ開いている、がよく見える。左手の壁には、田中邦衛佐野史郎又吉直樹などたくさんのサイン色紙が貼られている。左手に女湯の入り口。入ると、右手のロビー分削れた部分に鏡とドライヤーの棚、左手の壁沿いにロッカーと、上部は仕切りのない10人分くらいのベビーベッドで下がロッカーになっている棚が横にずらーっと並んでいる。真ん中に島ロッカーがひとつ。脱衣籠も現役でも床にいくつか。ガラス戸を開け、道に面した庭だった部分に出ると、横長の棚があり常連たちの置き荷が並んでいる。外廊下の右手奥には便所もある。洗い場の入り口には、小さな洗面台と、床部分にも蛇口がカランの小さな流しがある。脱衣場と洗い場をわけるガラス戸には黄色やピンク色の、丸なのか雲なのかの形をしたシールがもこもこと全面に貼られている。洗い場。右手と左手の壁沿いにカラン、真ん中に大きな銭湯の定番の島カランが2列。島カランは、湯はよく出るが水はちょぼちょぼしか出ない。カラン上の鏡にも黄色やピンク色の丸シールがところどころに貼られている。正面奥の湯船は、向かって右から、ふたり分のジェット、壁の柵から湯が流れ落ちるラドン効果のある泡風呂と少し区切って電気風呂、薬湯、と3つ並んでいる。薬湯はピンク色で、由布院の湯、コスモス色、と効能の書かれた紙がパウチされ置かれている。ペンキ絵は、男湯と女湯の壁の真ん中に大きな富士山、富士山の裾野はピンクと緑っぽい雲で覆われ、その下に海と島とヨットが見える。絵の左下に「2021.9.23 ナカジマ」と白ペンキでサインがある。天井は水色のパネルがびっちり貼られているが、湯気で曇って天井近くはほぼ見えない。ふつうの銭湯だと男湯と女湯のあいだに大きな梁が1本建つが、ここは男湯女湯にそれぞれ1本ずつの計2本の梁が天井を支えている。湯からあがり、体を乾かしながら脱衣場をうろうろしていると、10人分のベビーベッドが置かれた通路の一番奥に古いマッサージチェアを見つけ、その後ろにポスターのようなものが立てかけてあるのに気がつく。弁天湯と書かれた暖簾の下に浮世絵のような男女がいる絵柄で、脇に、09年、向井秀徳タテタカコジム・オルーク、の文字が見える。ポスターの右横には掃除機が置かれ、その後ろに向井秀徳のぼろぼろになったパネルも見える。脱衣場のあちこちで、ここ31日で閉めるんだって、うそー、気に入ってたのに、あんな貼り紙じゃ気が付かないわよ、と叫びのような声が上がっている。銭湯遍路の判子を女将さんにもらう。間に合ったわね、と言われ、閉店なんですね、と返すと、そう、と小さく笑う。写真の許可をもらいロビーから天井を撮る。ありがとうございました、と女将さんに頭をさげて外に出る。閉めるんだってー、と話しつつ、お客はひっきりなしに訪れ、外で写真を撮っている人たちも多い。ブックオフで買い物。そこからヨドバシの通りに出ると、ヨドバシの横がどーんと更地になっており、その向こうに銭湯の煙突が1本見える。近づくと、休業中の銭湯「よろづ湯」のもので、まわりの建物がなくなったため煙突も建物の横っ腹もすかっと見える。風俗の無料案内所の前で写真を撮っていると、えーなに?煙突、かっこいいね、と言いながら男たちが通り過ぎていく。JRで池袋まで帰り、東池袋マルエツでSと落ち合い買い物。こないだ見て気になっていた冷凍の焼き鳥と焼きとんの串を買う。本搾り。夕飯は、トマトアボカド、オニオンスライス、焼き鳥と焼きとん、かぼす煮麺。トースターで焼いた焼き鳥はうまいが、フライパンで焼いた焼きとんの肉は固い。ゴットタンのマジ歌選手権を見る。S家泊。

東京都の感染者数、76人。

2008年に弁天湯をたずねたときは、ガラス戸には東郷青児のような透かしがあり、ペンキ絵にはバスが走り、農夫病を気にしていた。入った瞬間に目に入る凝った天井にはひとつもふれていない。  阿佐ヶ谷住宅 - 断片日記

 

12月30日木曜日

晴れ。ひき肉玉ねぎじゃがいもミックスビーンズのカレー、ルーはカレーの壺。TVerで「ヤギと大悟」見る。ゲストの定型文のような態度、年配の女性を見ればギャル、お嬢さんと声をかける、がうるさく、ゲストに気を使う大悟も面白くなく、大悟とヤギだけをただただ見せて欲しい。Sは1年に1度の大掃除で往来座へ。わたしはS家で洗濯掃除をすませ、家に寄りアイロンを持ち、少し遅れて往来座へ行く。nとtがショーウィンドウの前の棚から本をすべて出し、空になったショーウィンドウのガラス窓を拭いている。去年はここにはっちがいたよねー、あれ?一昨年だっけ?とnと話す。わたしはユザワヤで買った赤い布を棚の大きさに沿って切っていく。Sは切った布のシワをアイロンで伸ばし、棚にテープで貼り付けていく。ショーウィンドウを元に戻し、nとtは店中のガラス窓を拭き、わたしは流しと便所を掃除、Sは外でいらない額縁を細かく切りゴミに出せるようにしている。saさん、めずらしいことりちゃんが来店。Sが缶ビールを買ってきたのでみなで飲む。めずちゃんは「HALO」と付録のベトナム写真集を納品。写真集は、めずちゃんが長年仕事で通ったベトナムの社食を写したもので、写真も、リソグラフの表紙も造本もとても楽しい。閉店作業をしていると、外を通りかかった人が店内をのぞき、名画座手帳ってなんですか?とたずねてき、説明するとその場で1冊買ってくださる。日芸の映画学科に通っていたそう。7時になり、tと先に予約していた升三へ。年に数回しか行かなくても1回しか行けなくてもその人にとって大事な場所ってあるんです、行ったほうがいいです、とt。tと生ビールを飲んでいるとnとSもやって来、乾杯。往来座の忘年会。生ビール、焼酎のお湯割り、シーザーサラダ、唐揚げ、おでん、野菜のオーブン焼き、さわらの西京焼き。今年出来たことと来年やりたいことを話し合う。元升三店員のGOがカウンターで飲んでおり、GOが西口でやっている店のチラシをもらう。店はコンセプト飲み屋で女の子がいる魔界とのこと。チラシにはティッシュではなく白いマスクが1枚ついている。忘年会終え、nは池袋方面へ、だいぶ飲んだtがふらふらと雑司ヶ谷に帰っていく。Sとツルハドラッグで買い物して帰る。飲みすぎて早々に寝る。S家泊。

東京都の感染者数、64人。