断片日記

断片と告知

銭湯

清水湯

2月24日に廃業する、世田谷区太子堂の銭湯「清水湯」へ行く。三軒茶屋駅から茶沢通りを抜けしばらく、左手にコインランドリーを見つけ、空に大きな煙突を見上げる。茶沢通りに面しているのは黄色い屋根のコインランドリーと男湯側の風呂の窓か。コインランド…

大黒湯

雑司ヶ谷のアトリエから小石川図書館に行くとき、よく前を通る。通るたびに屋根の上が気にかかる。銭湯「大黒湯」の屋根の上には、八角形の湯気抜きがある。銭湯の洗い場の屋根に突き出る部分を、湯気抜き、と言うのだとも、大黒湯の紹介文ではじめて知った…

くまの湯

廃業する銭湯ばかり追いかけているわけではないが、何日に廃業すると知ってしまえば、いま見ておかなければと心があせる。廃業の日の銭湯には、いつもとは違う、その日だけの空気が流れている。 大江戸線の終点、光が丘まで。地下鉄の駅の上に建ち並ぶ団地群…

ゆたか湯

高田馬場から西武新宿線で上井草へ行く。改札を抜けしばらく歩いてから、ここが、いわさきちひろ美術館のある町だと思い出す。銭湯「ゆたか湯」は、いわさきちひろ美術館への道筋の、千川通りに面したマンションの1階にある。 千川通りにどーんと、ゆ、サウ…

小杉湯、世界湯、日の出湯

高円寺の銭湯「小杉湯」。鯉の滝登りの木製の懸魚のある、古く立派な銭湯だが、改装され所々新しくなっている。外の路地から見ると、左から女性専用のコインランドリー、入り口、入り口右手に格子窓、窓の向こうにロビー兼ギャラリーの明かりが透けて見え、…

金泉湯

いつでも行けそうだからといつも前を通りすぎていた、早稲田の古本屋、古書現世の横の横に建つ銭湯「金泉湯」に行く。 瓦屋根の、唐破風の、立派な煙突のある、古く大きな銭湯。入り口左手にコインランドリー、暖簾をくぐると正面にフロント、右手に大きな池…

川嶋湯

仕事終わりの王子を誘い、北赤羽の銭湯「川嶋湯」へ行く。はじめて降りる駅から、川を越え、団地を横に見、日の落ちた住宅地の空に煙突を見つける。「川嶋湯」の前の道に、白黒の猫が1匹寝ているのを見る。 瓦屋根の唐破風、木製の懸魚、のある大きく古い立…

第二松の湯

品川から赤い電車に乗り大森町まで。 頭の上を高速道路が走る大きな道路を歩き、川沿いの道を曲がる。ビルとビルの間を見ると、目指す銭湯の煙突が伸びているのを見つける。煙突よりも、横のマンションのほうが背が高く、マンションの外階段のすぐ横で、黒い…

末広湯

12月26日に廃業すると、つぶやきで知った銭湯「末広湯」に行く。品川から京急の赤い電車に乗り換え、京急蒲田駅へ。立替中の入り組んだ駅を降り、乗用車よりもトラックが目立つ大きな道路、第一京浜を歩き、環八を渡って左折する。個人商店もなく、チェーン…

上田六文銭の旅その2

朝9時、ロビーで待ち合わせ。コンビニで朝飯を買い、千曲川の土手に行く。4人で土手に座り、黙って朝飯を食べ、黙って朝の千曲川を見る。川の向こうの太陽がまぶしい。東京に比べて上田の太陽はやけに大きくまぶしく見える。 Kさんの家に行き、Kさんの家の…

みぎひだり

雑司が谷から副都心線に乗り渋谷へ。改札を出ず、いくつかの階段をのぼり、田園都市線のホームへ。用賀まで行く。用賀駅から、瓦でできた遊歩道を歩く。大きな道路にぶつかり、越えれば砧公園がある。トラックが走る大きな道路、目の端に入る高速の高架、そ…

中落ち仙台2日目

チェックアウトは11時とゆっくり。朝風呂に入り、ぼんやりとテレビを見てから、ロビーにおりる。ソファにはすでにパロパロ向井の姿。ドラマの「ママはニューハーフ」を見ていたと報告すると、パロパロ向井は時代劇の「あばれ八州御用旅」を見ていたと言い、…

初音湯

神保町で仕事の打ち合わせを終え、谷中まで歩く。神保町から御茶ノ水、湯島聖堂の横を抜けて、湯島天神、不忍池、へび道、と歩いて行く。湯島天神では菊まつりが開催中で、大きな菊の花の鉢がいくつも並んでいる。大人の頭くらいありそうな巨大な花を見てい…

さよなら倉敷:倉敷滞在4日目その2

蟲文庫に戻り、赤福を食べたり、亀のツブを眺めたり。ツブは、体の大きくなった今も、子どもの頃に通れた隙間を通り抜けられると信じている。狭い隙間に頭を突っ込み、甲羅が邪魔してそれ以上入ろうとしても入れず、だが諦めず、押された何かがツブと一緒に…

「I♥湯」:倉敷滞在3日目その3

8月11日。倉敷滞在3日目その3 昼飯を食って、港で海を見て、足元で揺れるミルククラウンのような海月を見て、港の警備の人に海に落ちないようにと注意されて、正面に見える三角の島の名前が知りたくて聞きはぐって、その向こうに二往復した瀬戸大橋が見えて…

あれがアートや:倉敷滞在3日目その2

8月11日。倉敷滞在3日目その2 売店で缶ビールを買い、直島上陸を祝って乾杯する。今日一杯目のビール。船着場の喫煙所で煙草を吸う王子の横で、瀬戸芸のTシャツを着たスタッフのおじさんも煙草を吸っている。このおじさんに、どこか安くて美味い昼飯屋は、…

用水路と花崗岩:倉敷滞在2日目

ホテルの1階でバイキングの朝飯を食べる。まだ寝ているのか、朝飯の場所に王子の姿は見当たらない。スクランブルエッグ、ソーセージ、をバターロールにはさみ、オレンジジュースで飲み下す。10時、ロビーで王子と待ち合わせ。岡山駅まで、また桃太郎大通りを…

田端駅南口徒歩2分

山手線の田端駅、ホームの端の西日暮里寄りの階段をのぼると、ふたつしかない自動改札の、小さな南口に出る。小さな改札を抜けると左手下には線路、正面の空にはスカイツリーと視界がひらけ、右手には細く急な石段がのびる。石段をあがると桜並木の道に出る…

朝日湯

飲む前に風呂だろ、と銭湯「朝日湯」へ行く。「朝日湯」は、アトリエのある小学校の正門から徒歩20歩で着く、私の日常に一番近い銭湯だ。近いくせにいままで行かなかったのは、ビルの中にあるイマドキの普通の銭湯に見えるからで、いつでも行けると思いなが…

曇天4日目

曇天4日目です。東京の空は毎日見事に曇天です。平日は来られない方もいると思いますので、土曜日の今日は午後2時から在廊しております。お時間ある方、ぜひどうぞ。 初日30日は、ポポタムそばの銭湯「桃仙浴場」の廃業日でした。ポポタムへ行く前に最後の湯…

鶴の湯

行きは時間を気にして電車で向い、用事を済ませた帰り道は時間を気にすることなく歩いて帰る。原宿から雑司ヶ谷まで、そんな風にして歩くことが多い。大通り沿いよりも、1本か2本裏道の、人も車も少ない道を選んで歩く。このあたりは、どの駅からも離れた…

あなたの好きなもの

あなたの住む町、あなたの好きな町、あなたのよく行く町にはたぶん、あなたがいいなと思い無くなって欲しくないなと思う何かがあるはずで、それがあるからこそあなたはその町が好きでその町に通いその町を歩く。それならば、あなたはその何かをとても大事に…

月の湯でした

朝8時半、目白台の銭湯「月の湯」へ行く。脱衣所と洗い場が本と雑貨で埋まる空間を見て、前日の搬入を手伝えなかったことを悔やむ。外は重たい曇り空だが、洗い場の天井はいつも高くて水色で、見上げると黒と朱の鯉のぼりが2匹、気持ちよさげに泳いでいる。…

明日は月の湯

明日4月4日は、文京区目白台の銭湯「月の湯」での、「月の湯古本まつり」です。東京の桜はちょうど満開で、近くの神田川沿いの、新しくできた目白台運動公園の、桜がとても美しいです。お花見をしつつ、銭湯で古本を買い、夕方5時半から営業の銭湯「月の湯」…

白くなる

西武池袋線の大泉学園駅で降りる。バス通りを南に向かって歩く。道すがらいくつかの学校がある。都心から少し離れた学校の、大きな校庭を見るといつも、自分の通っていた小学校の小さな校庭を思い出す。小さな校庭いっぱいに描かれたトラックの線は、1周80メ…

いつからあるのかわからない

入るのに勇気がいる銭湯もある。池袋駅西口を出て要町通りを進み、右手に見えてくるデイリーヤマザキの手前の路地を右折する。高いビルに囲まれてはいるものの広い道のせいか抜けがいい要町通りの明るさと、路地を曲がった先の暗い色をした常緑樹に囲まれた…

瓦礫の向こう

ブログ「谷根千ウロウロ」さんが撮ってくれた、谷中の銭湯「世界湯」の最後。瓦礫の向こうに小さな富士が見える。この場にいたら、たぶん私は泣いていた。bakyung.com - 小林秀雄 庄司薫 倉多江美 矢作俊彦 望月三起也 リソースおよび情報

廃業と絶筆

地元のよく行く銭湯でない限り、いつ銭湯が廃業するかを事前に知るのは難しい。ある日突然どこかで廃業の知らせを見るか聞くかし、慌てふためき、どうして行かなかったのかと悔いる。 谷中の銭湯「世界湯」の廃業の知らせを事前に知ることができたのは、そこ…

五色湯

椎名町そばの銭湯「五色湯」へ行く。地図を見ながらこの辺かしらと見上げた空に、「五色湯」と書かれた煙突がある。目印も何もない住宅街の中で不安になりながら銭湯を探すとき、家やビルの間から見える煙突は何よりの目印だ。イマドキのビルの1階にある銭湯…

ジャイアニズム

飲む前に風呂だろ、と銭湯「大塚記念湯」に行く。ぬるめの泡風呂と熱めの薬風呂そして水風呂とを交互に入る。汗が出れば出るだけ酒は美味くなるだろう、といつもよりも時間をかける。のぼせた頭を風にさらして「わめぞ」忘年会会場の雑司が谷「アミ」へと歩…